大判例

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東京高等裁判所 昭和52年(う)2834号 判決

被告人 豊田政孝

〔抄 録〕

ところで覚せい剤を他から譲受けて所持する場合、譲受けに当然随伴する所持は譲受けの所為に包含、吸収せられ、譲受けの罪のほかに所持罪を構成しないと解すべきであるが、譲受け後における所持の目的、態様等に変動をきたし、社会通念上新たな所持が開始されたと認められる場合には、これをもって譲受け行為に包含されるものということはできない。

これを本件についてみるに、一件記録を精査検討すると、被告人は昭和五二年二月一日午後四時ころ東京都港区高輪三丁目二六番二七号国鉄品川駅構内の西口改札口付近通称地下道便所において羅淙禮から、これまでの販売ルートとは違う覚せい剤の取引を勧められ、その見本として覚せい剤の結晶一・二二一グラムを無償で譲受けた(原判示第一の三の事実)が、その後、それまで覚せい剤の取引をしていた鈴木功及び大塚清から覚せい剤を売渡した残代金の支払を受けるとともに、羅から譲受けた右覚せい剤を見本として右鈴木らに提供して取引をしようと考え、同人らと電話連絡をとったうえ、原審相被告人平木三千重を伴って、鈴木らと会う約束をしていた東京都墨田区江東橋四丁目二七番四号喫茶店「カトレヤ」に向ったが、右電話に出た相手の異常な態度から危険を感じた被告人が不測の事態が起きたときには右平木をしてこれを持って逃走させる意図のもとに、右覚せい剤を同女に渡し、受取った同女はこれをハンドバッグに収納して同日午後七時ころ右喫茶店に赴いたところ、同所において警察官に覚せい剤所持の現行犯人として逮捕されるとともに、その場で右覚せい剤を差押えられた(原判示第二の五の事実)ことが関係各証拠によって認められ、これに反する証拠はない。右認定の事実関係からすると、覚せい剤を将来の取引の見本として無償譲渡された被告人がその覚せい剤を将来多量に売渡すための見本として譲渡するべく、譲受けの約三時間後に別の場所で、発覚を防止するため同伴する女性に持たせて間接所持していたのであるから、そのときから譲受け行為に包含されない別個独立の所持が開始されたと認むべきであり、譲受罪のほかに所持罪が成立するものと解するのが相当である。

(寺尾 山本 杉浦)

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